公正証書遺言の作成の流れ

 最近、公正証書遺言の作成のご相談をよく頂きます。
私は個人で開業する前に公証役場の実務を把握すべく23区内の公証役場で書記として仕事をしたことがありまして、その間に百数十件以上の公正証書遺言の作成の手続きを担当させて頂きました。その経験を踏まえ公証役場(公証人)が何をどのような流れで行うかをお伝えさせて頂きます。
①最初に、写真付き身分証明書(免許証等)にて本人確認を行います。そして遺言者本人が意思能力(自分の考えを整理して伝えることができるか)を備えているかをそれとなく確認させて頂きます。これは遺言者に遺言書を作成する能力があるかの確認です。遺言者のお話をお聞きし始めたところ、遺言書を作成するのは難しいと判断しお帰り頂いたこともあります。
②次に、ご本人に遺言を書こうと考えている背景・目的、家族構成、遺産の内容、遺言に書きたいことをお聞きします。
③そして、提出頂く資料をお伝えし、おおよその日程を摺合せします。
④必要な情報は、相続人・受贈者に関する情報と遺産を特定するための情報(不動産、預貯金口座、株等)及びその金額情報です。金額は公証役場の手数料を計算するために必要となります。相続税の計算のようにシビアな金額ではありません。遺産の分け方を決めるために必要な方もいらっしゃると思いますが、遺言書に金額を記載することは稀です。遺産の金額は変わるからです。不動産をお持ちの方は年度の初めに送付される納税通知書のコピーを提供頂く必要があります。
⑤その後得た情報をもとに公証人が遺言書の案を作成しチェックを行い遺言者に送付し確認して頂きます。内容の了承を頂くまでこれを繰り返します。遺言書は公証役場に雛形(基本となるもの)も過去の実例も多数存在します。公証人はそれをもとに遺言書を作成します。士業が原案を作成して提出してもそれをベースに作成されることは殆どありません。他人が作成したものを検証することはたいへんですし、役場で保有する法的に正しく卑近な遺言をもとにするする方が効率的だからです。提出された士業の方もいましたがそれは情報を得るための1つとなりました。ですので、公証人に伝えるのは、遺言の内容を箇条書きにしたものが好まれます。(公証人連合会のホームページにも、「相続内容のメモ(遺言者がどのような財産を有していて、それを誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)をご提出ください。」と記載されています。
⑥遺言書と計算書が完成しましたら、面談日を決め、証人を手配(役場の提携しているところから派遣して頂けます)します。計算書は事前に送付されます。
⑦そして当日、遺言者、証人2人の前で、公証人が遺言書の内容を読み聞かせ、皆さんに確認頂き、遺言者、証人二人と公証人が署名捺印して遺言書が完成します。ご家族は同席できません(離れて座るよう指示されます)。そして、料金をお支払い頂き、正本と謄本各一部をお渡しして終了です。
 士業に代理をご希望され方もいますが他の公正証書のような一般的な代理はできません(日本公証人連合会のホームページにも書かれています)。私がサポートさせて頂くのは、①遺言書作成の背景目的と遺言の内容をお聞きして卑近の公正証書遺言のイメージを見て頂きます。②遺言書の構成(本文と付言事項)・注意事項(遺留分、予備的遺言等)をお知らせして検討して頂きます。③用意して頂く書類をお知らせし準備して頂きます。登記簿等はご依頼を頂けば取得代行いたします(別料金となります)。④遺言書の内容をお聞きしてメモにまとめ確認して頂きます。※一度、対面(TV会議またはお宅を訪問)にて遺言者本人の意思を確認させて頂きます。⑤公証役場との情報のやり取りを仲介をして段取り(日程調整含む)を調整いたします。遺言書案の確認の中継をさせて頂きます。⑥作成当日に証人の一人を担当させて頂きます(こちらも別料金となります)。手順、必要書類等は公証役場・公証人の考えによって多少差がありますが公証役場への最初の連絡の際に確認いたします。以上、検討のご参考としてください。