担当させて頂いた相続のご依頼の中から特徴のある事例を紹介させて頂きます。

相続1:前妻との間に面識のないお子さんがいた事例
ご主人が急逝し奥様から「前妻のお子さんがいるようですがどのようすればよいでしょうか」と相談を頂きました。奥様は亡くなったご主人からは直接話を聞いたことはなかったそうですが、少し前まで仕送りをしていたことは気づいていたそうです。まず、相続人調査を行い戸籍と附票を取得し現住所を確認しました。第1ステップとして、奥様に「相続手続きのご協力を頂きたい。ついては連絡方法を教えて下さい。」という内容のお手紙を手書きして郵送して頂きました。その方は海外で仕事をされる機会があり少し時間がかかりましたが「了解しました。」とのお返事が着きました。次のステップは、相続についてのお考えの確認です。奥様に電話で「どのようにお考えでしょうか」と柔らかく確認して頂きました。「学費等を仕送りして頂いていたので相続財産を受ける考えはない。」との返答を頂けました。以降は私が引継いで手続きを進めさせて頂き、「相続分譲渡証明書」に署名捺印を頂き、その後他の相続人間で「分割協議書」を作成し署名捺印を頂き遺産分割手続きを終了しました。

相続2:ローン(キャッシング)を残したまま亡くなった方の事例
代表相続人の方がご相談にお見えになり、債権取立て会社からの支払い依頼のはがきや手紙がいくつか残されていたことをお聞きしました。返済を行っていたようですが滞っていたようで債権回収会社に譲渡されている債務もありました。ご相談は「個々に確認したほうが良いか。放っておいたっ方が良いか。」でした。この先は争いごとになる可能性もあるので私にはお応えできませんでした。伝手を辿って弁護士に相談に行きました。「債権回収会社は消滅時効になるようなことはしないので、確認してすっきりしたらいかがですか。」との弁護士の助言により、代表相続人は1社づつ状況と残額を確認し支払いを完了しました。その後相続手続きも終了してすっきりされていました。

相続3:兄弟相続の代襲相続で父親は離婚歴がありで相続人が9人という事例
「被相続人の戸籍を途中まで取得したが、相続人の中には今まであったことのない人がいることがわかりどのようにしたらよいかわからない。」との相談を頂きました。まず、相続人調査を行い戸籍と附票を取得し現住所を確認しました。問題はその方々にどのように連絡を取り分割協議をまとめるかです。第1ステップは、相続人代表者にお手紙を書いてご協力のお願いと連絡方法を確認することをお願いしました。すぐに連絡が取れた方もいましたが、ご高齢で中々返答のない方もいました。そこで遠い親戚の年嵩の方にその方のところまで行ってお考えを確認して頂きました。この方がいらっしゃったことは幸運でした。その後「分割協議証明書」を作成し各相続人に郵送し、署名捺印をして頂き印鑑証明書を同封して返送して頂きました。以降、入金はいつになるかの催促もありましたが、手続きは順調に進み遺産分割手続きを終了しました。

相続4:相続人は配偶者と子供2人、配偶者は認知症で施設に入っていた事例
離れて住むお父様がお亡くなりになり、相続人の長姉から「相続人の一人である母親は認知症の症状があるがどのように対応すればよいか」との相談を受けました。お母様に後見人は選任されておらず、提携する司法書士に依頼して被後見人のお住まいの県の家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをして頂きました。後見人候補者にお子さんを記入して申請しましたが、当該家庭裁判所から後見支援信託の提案を受け、親族後見人(身上監護)にはお子さん、専門職後見人(財産管理)には当該家庭裁判所所在県の司法書士が任命されました。その先生は相続財産の仕分けをして分割協議書に署名捺印をし信託銀行への信託をして後見人業務を終了されました。以降は、後見人の報酬がなくなりましたが、信託銀行の管理手数料が必要となりました。

相続5:相続財産の金融資産が十数機関にわたり多種類の商品で運用されていた事例
亡くなる前まで、お一人で株式(二十数銘柄)、国債、社債、投資信託(多数の商品)を十数機関で運用されていたため、相続人はどこに何があるのか把握されていませんでした。家にある運用報告書等の郵便物を探して整理され、後は金融機関の名寄せで財産調査を行いました。市場価格が変動する金融財産の相続手続きは相続する方の口座(なければ開設して頂く)に一旦異動をして頂くことになります。その後、そのままの形で所有するか、売買するかは相続人の別途の判断となります。(売却するには、事前に金融機関に考えを伝えておいて確認の連絡を待ち売却指示をします)このため金融機関手続きは3カ月程かかりました。最初、相続人は資産運用を継続していこうとお考えでしたが、日々の評価額の変動が大きく気疲れしてしまい売却することに変更されました。終活でできるだけ整理して頂くことは大切だと感じた事例でした。

相続6:遺言書があったけれど分割協議書による相続を希望された事例
相続人は配偶者と弟で「財産はすべて妻〇〇に相続する。」と書かれて遺言書がありました。(取引先金融機関の営業担当の立会いのもとに開封したとのことでした)最初のご相談に伺ったときは「遺言書に従って手続きを進めてください。」と仰っていましたが、その後、姪の方から電話を頂き「検認の費用をかけたくないのでこちらで分割協議書で進めたい。」との申し出がありました。遺言書があっても相続人他すべての関係者の合意があれば分割協議書で対応できます。弟さんは「相続財産はいらない。すべて義姉さんが相続する形で良い。」とのことでした。手続きの結果は同じになります。配偶者の方は、被相続人の気持ちを汲んで遺言書で対応するか、姪の提案を聞いて費用をかけずに分割協議書で対応するか悩まれいました。ご親族で相談頂き、姪の方が分割協議書を作成する形で進めて頂くことになりました。

相続7:被相続人の配偶者が子供のために手続きを依頼ことに息子の奥さんが反対した事例
相続人は配偶者と子供。相談者は被相続人の配偶者。「息子に面倒をかけないように進めたい。私には生活できるだけの財産を残して後は息子に渡して欲しい。」とご相談を頂いて手続きを開始しました。息子さんに手続き(印鑑証明と分割証明書の署名捺印他)の説明に伺った際に奥さんが入ってきて「余計なお金はかけたくない。」と契約の中止を強く要望されたため、契約を中止しご自身で手続きして頂くことにしました。

相続8:相続財産に知らない不動産(一軒家)があり知らない人が住んでいた事例
相続財産の確認をしたら、不動産の納税通知書にある土地(更地)に一軒家が建っていて知らないご夫婦が住んでいました。昔から被相続人が賃貸していたようでした。相続人代表者からどうすれば良いか相談を受け、まず、被相続人が亡くなったこと、その相続手続きに協力頂きたいことのお願いの手紙を書いて郵送して頂きました。しかし返信はありませんでした。相続税申告の時期を迎えていましたのでこの状態のまま仮申告をして頂きました。その後、話合いをして経緯を確認して頂き以降の対応を決めて修正申告をして頂きました。

相続9:相続人は姪と甥(姉弟)、甥(弟)の行方が分からないといった事例
「暫くの間、弟とは音信不通でどこに暮らしているのかわからない」との相談を受けました。分かるのは以前聞いたことがあった電話番号と住所。電話して頂きましたが繋がらず、その住所に手紙を書いて書留で郵送して頂きましたが受取人不在で戻ってきました。電話番号でネット検索しましたら該当者ありましたが女性でした。(その後に同居人だったことがわかりました。)。親戚筋より施設に入っているという情報があり、その地域の施設を検索して電話して頂きましたが、「そういう方はいません。」または「個人情報なのでお答えできません。」との回答でした。その住所に行って頂こうと考えていましたら、連絡が来て「郵便受けに不在通知があったので連絡した」とのことでした。施設と自宅を行き来していたそうです。以降は通常の手順で進めることができ相続手続きは終了しました。

相続10:相続人は被相続人の兄弟。兄弟が不仲で分割協議がまとまらない事例
相続人の長兄と末弟は隣同士で暮らしていました。長兄よりご相談を頂き初回面談を行いましたが、お二人同席でお話を始めた時から過去の出来事を持ち出して口論となり話はまとまる方向に向かいませんでした。時をおいて何度か機会を持ちましたが変わりません。このままでは対応できないことをお伝えし、「甥姪の皆さんを交えて話し合って頂き、まとまりましたらそれを箇条書きにして頂き皆さんの前で署名してそれをお送りください。」とお願いして中断とさせて頂きました。このままでは、相続税の申告・納税ができない状況になってしまします。1ケ月ほど経ちましたら連絡があり、その文書が送られてきました。それを確認して手続きを再開しました。以降は問題が再発することもなく進められ相続手続きは終了できました。

相続11:ネット証券に相続財産があった事例
ご主人が病気で急逝されました。相続財産は自宅不動産、生活に関係する預貯金は認識されていましたが、資産運用されていた金融財産は把握されていませんでした。定期的に送られてくる運用報告書等の郵便物を調査して数カ所で運用されていることがわかりました。パソコンのパスワードもお分かりでしたので、メール、フォルダーも確認して頂きました。(今後、ペーパーレスで郵送提供を止めてしまう場合は何かメモを残しておくことは必須です)それらの情報より、ホームページで相続手続きの情報を検索しましたが問合せ先しか掲載されていない会社もありました。それらの会社に電話連絡して口座の確認方法、相続手続きの方法を確認しました。新規参入の会社は手続きが整備されていないところ、できない手続きを担当者が回答するところもありました。しかたがないので個人情報保護管理責任者に電話して確認・調整させて頂きました。時間はかかりましたが、提示された方法に従い相続手続きを完了しました。

相続12:お父様の相続手続きのご相談で以前の相続手続きが3回未実施だった事例
九州にお住いのお父様がお亡くなり埼玉に住むご子息からその相続手続きのご相談を頂きました。相続手続きにどれくらいのお金がかかるか知りたいとのことでした。早速に事務所を訪問頂きお話をお聞きしました。相続人は親子三人、相続財産は不動産と銀行の預貯金。実際に把握されているのは九州にお住いのお母様で既に銀行に連絡して手続きを進めようとしているとのことでした。四十九日に帰省した際に必要な情報を収集して提供頂くことになりました。資料をお送り頂き状況をお聞きし概要は理解できました。不動産はご自宅の他にお父様がお祖母様から相続した土地・建物(名義はお祖母様)と伯父様が公正証書遺言?で叔母様に遺贈し叔母様が自筆証書遺言?でお父様に遺贈しようとしたマンション(名義は伯父様)があることがわかりました。その後Googleの航空写真でお祖母様の土地の建物はなくなっていることが判明しました。ここまで少し時間がかかりましたが遺言による相続2件と数次相続で相続手続きをする建付けで見積書を提出しました。(被相続人の戸籍調査が4人となりそれなりの金額となりました)。合わせて、九州の地元の業者に相談されたほうが良いのではないでしょうかとご提案しました。家族で相談してみますとのことでご辞退となりました。相続について関係者で話をしていらしたようですが実際の手続きは実施されていませんでした。終活をして準備して頂いていたのに継承されなかった残念なケースでした。

公証役場で手続きさせて頂いた公正証書遺言の中から特異な事例を紹介させて頂きます。

遺言1:遺言書作成の意図をご本人が説明できず公証人に作成をお断りされた事例
60歳を超えた男性が奥様とお子さんと一緒に公証役場を訪れ、遺言書作成の相談にお見えになりました。奥様とお子さんは離れて座って頂き遺言者が公証人の机の前に座って面談を始めました。公証人がお名前をお聞きし遺言書作成の意図をお聞きしましたら明瞭にお答えを頂けませんでした。遺言書作成の意図をご本人が説明できない(意思能力が足りない)場合は遺言書は作成できないとお伝えしお帰り頂きました。奥様とお子さんはその心配もお持ちだったようでした。

遺言2:癌で入院中の依頼者が遺言書作成直前に亡くなってしまった事例
士業の先生経由のご依頼でした。遺言者は癌で長らく入院中で動くことが難儀な状態であったため、初回の面談は公証人が病院に出張して行いました。その後遺言書の案を作成し士業の先生経由で確認して頂き、後は病院へ出張して実際の遺言書を作成する状況にありました。日時も決まりその日をお待ちしていましたら、その二日前に体調が悪化して亡くなってしまったとの連絡が入りました。中止になりましたので中止の手数料を頂きました。

遺言3:遺言書を頻繁に修正される事例
数年前に公正証書遺言を作成した方が遺言書修正の相談にお見えになりました。以前にも一度修正を行っている方です。遺言書の内容は財産を各相続人にきちんと細かく配分されていました。公証人は、まず前の遺言書を修正する遺言書を作成するか前の遺言書を撤回して新規作成するか確認されました。次にどのように遺産相続(分配)するかを確認されました。分け方を、口座(財産)ごとにするか、金額で指定するか、割合で指定するか等を確認しました。基本的に本人の意思を尊重しますがその後のことも考えてアドバイスされます。遺言書を作成した後に家族構成や状況、財産構成も変わります。そのことも考えて記載するか否かによってその後の修正の頻度を変えることができます。

遺言4:奥様がご主人の遺言書を作成したいとご相談にお見えになった事例
遺言者のご主人は認知症の症状が出始めて施設に入居されていました。奥様がお一人で公証役場にお見えになり、状況と作成する遺言書の内容を公証人にお話して進め方を確認されました。公証人は遺言書本人の意思確認を行います。このようなケースでは施設に「面談させて頂ける状態か、いつ会えるか」をご家族に確認して頂きます。まずは電話で遺言者と話をさせて頂き本人の意思を確認させて頂きます。最初に奥様から電話して頂き、公証人が替わってお話した時はご主人は遺言書の状況を認識できていない状態でした。奥様は「話をして認識を合わせてまた来ます。」とお帰りなりました。その後またお見えになり、また電話をかけて頂きましたが状況は変わりませんでした。奥様は「すいません。今度はしっかり話をして納得させてから来ます。」と言ってお帰りになりました。以降、奥様はお見えになりませんでした。

担当させて頂いた遺言書作成のご依頼の中から特異な事例を紹介させて頂きます。

遺言5:印鑑証明書の氏名の漢字が異なっていた事例
年配のご夫妻より公正証書作成のサポートのご依頼を受け、戸籍、印鑑証明書等の必要書類(コピー)を提供頂きました。書類上の苗字は旧字を使われていましたが通常手続きは略字(新字体)を使用されていました。名字の旧字は2種類あり、頂いた印鑑証明書はコピーのためどちらに字かはっきりわかりませんでした。このため原本をお借りして確認させて頂きましたがご本人の認識と異なっていました。念のため、当該市役所に確認しました。回答は右記です。「①印鑑証明書、住民票、現在戸籍の氏名の漢字は同じ字が使われている。(∵申請時に相関チェックしている)②コンピュータ化前後の戸籍の氏名も同じである。(チェックしている)③転入時(平成元年)は添付された転入元戸籍の漢字を確認するので同じ字のはずである。④実際の漢字の確認は御本人に役所の戸籍係へ着て頂きたい」とのことでした。しかし、印鑑証明書の漢字は転入元の市役所の戸籍の氏名の漢字(手書き)と明らかに違います。転入手続きの戸籍作成の際に何らかの齟齬があったと思われます。公証人に相談して公正証書遺言は印鑑証明書の漢字で作成頂きました。